初めて半断食法を提唱
熱海断食道場 牧内泰道物語
2. 全国で初めて半断食法を提唱
「完全断食、水だけの断食は危険なので、ここでは半断食です。体質別とか、陰陽の法則で一人一人違うけれど、基本的には桜沢如一のマクロビオディック方式の断食道場ですね。大森英桜式かな」(牧内)
大森英桜氏は桜沢氏の高弟で、2005年に亡くなるまで、毎月、熱海断食道場へ指導に訪れていたという。
「半断食」という言葉は、牧内泰道が日本で初めて使用した。
玄米おにぎりとワカメの味噌汁。
これが、牧内泰道氏が熱海断食道場で出していた代表的な食事メニューである。
「断食」という言葉のイメージでここへ来た人は、最初に驚く。
腸に滞留した便(宿便)を排泄するために、昔から断食が体験的に受け継がれてきた。現代でも全国に多くの断食道場があり、断食をする人が増えている。また、現代医学でも、断食を治療の一環に入れているところもあります。
断食は、あらゆる病気の予防・改善のためにもたいへん効果があるのだ。
ところが近年、断食に伴う宿便、あるいは断食をした人の症状が、昔から見ると少し変化してきていることに牧内は気づいた。
「かつての断食の常識では、断食中には体内の毒素の排出力が始まって、毒ヘビにかまれても何でもないと言われていました。そして、自然治癒力が高まり、いろいろな病気が治るのです。
しかし最近では、一見元気で丈夫そうな人が断食中に体力を無くしてしまうようなことが起こるのです。
その理由は、戦後の食べ物の変化です。かつての日本人は穀物と野菜を中心に食べてきた民族ですが、間違った現代栄養学の影響で、食生活が急激に変化してきまして、肉・卵に至っては戦前の20倍以上も摂っています。
戦前は牛乳なんて飲んでいなかったのですが、戦後、学校給食とともに牛乳を飲み始めたのです。さらに白砂糖や食品添加物や農薬や加工食品も氾濫して、食べ物がまるで変わってしまって、日本人の体質そのものが弱くなってしまったのです」
食べ物の変化によって、断食の指導の仕方も変わらなければならないのでだが、多くの断食道場では、依然として30年以上前の体験に基づいて指導していたのだ。
「多くは下剤を使い、水あるいは野菜汁などの身体を冷やす陰性の飲み物を大量に飲ませ、身体を動かさないで寝ています。だから長期の滞在でないと宿便が出ませんし、動かないで水分を大量に摂りますから体力が落ちてしまう可能性もあります。昔はそれで良かったのですが、食生活の欧米化で体質が変わってしまった現代人には合いません。
だから、現代人に合っていて効果があるのは、半断食という方法です」
牧内の勧める断食法は、少量の食事を採りながら、または酵素ジュースを飲みながら腸を休ませる方法で、近年ではプチ断食という人もいる。